強 必要な強さは十分に確保できる木の住まい

  • 地震に強くするにはどの構造が一番いいの?
  • 鉄筋コンクリート造や鉄骨造が木造より強いんでしょう?

一般の人からのよくある質問であり、指摘です。 超高層ビルは鉄骨でできている、大きな建物はがっしりした鉄筋コンクリート造で造るものだ、などを見聞きした故の発言なのでしょう。 確かに超高層の木造は世界中のどこにも存在しませんし、木で造られた大規模な建物も まだまだ少数です(しかも、集成材を使用するなど特殊な造り方のものが一般的です)。

どうやら一般消費者の多くは、木造(この冊子では、特に断らない限り一般的に大工さんがつくる在来軸組工法のものを指します)に対して「余り地震に強くない構造だ」とのイメージを抱いているようです。でも本当に木造は弱いのか、地震に対して強くないのか、特に住宅という建物において・・これらの問いに対するしっかりとした答えを用意しておく必要があります。

そして得た結論は、住宅だと木造で必要な強さは確保できる。しかも容易に、です。

一般道を気持ちよく走るには普通車で十分で、高速で走れるスポーツカーは不要。むしろ扱い難いかもしれません。「普通車」は木造に、「一般道を走る」が2階建て住宅に求められる構造的強さに読み替えて下さい。すると、「2階建て住宅に求められる構造的強さは、木造で十分だ」となります。ついでに言うと、「高速で走れるスポーツカー」は超高層ビルや大規模建築物も可能な鉄骨造の例えです。

しかも、ここでの「十分」は、単なる十分ではありません。余裕のある十分さで、しかも容易に達成できる十分さなのです(あたかも普通車でも高速道路走行が「十分」できるように)。 例えを裏付ける説明は専門的すぎるのでここでは省略しますが、南海地震対策が叫ばれる昨今、木造の構造的信頼性の高さを消費者に伝える必要性は増すばかりです。

容易に十分な強さが確保できるといっても、構造上の決まり(構造種別ごとに建築基準法に示されています)をきちんと守って設計や施工がなされていなければならないのは当然のことです。どんな構造の建築物でもこの決まりを守らないと地震で崩壊してしまう怖れがあるのは、平成17年の構造計算書偽装問題に始まった一連の事例をみるまでもないでしょう。

徳島県木造住宅推進協議会(以下「木住協」といいます)は、県産材を多用した木造住宅の促進を最大の活動目標にしていますが、その住宅が「的確に設計・施工されたもの」を大前提にしていることは言うまでもありません。

(注)建築基準法で求められている地震に対する強さ
数百年に一度起きる大地震に対して倒壊せず、百年に数回起きる中小地震に対しては損壊しない強さ。この強さは、構造種別に拘わらず求められている。

さて、人の価値観はさまざまで、住宅に対する要望も多様です。安く建てたい、広い家が欲しい、電気代が余りかかならない家にしたい、機能的な間取りがよい、明るいリビングがいい、等々・・・。こうした要望には、主観的なものと客観的に評価できるものが混在しています。後者に属するもの、例えば、構造的な強さ、省エネ性、耐久性などの住宅の「性能」についてその程度をグレード(等級)で表します。そして、建築主の希望に応じた性能別の等級を、設計段階から施工段階を通じて実現していくことを支援する制度が平成14年に創られています。それが「住宅性能表示制度」です。

地震に対する強さ(構造の安定)もこの制度における性能の1つで、建築主の希望によってはその性能を非常に高くできます。もちろん、在来軸組工法の木造住宅でも容易に最も強いレベル(下表の等級3)にすることは難しくありません。

等級1
建築基準法レベル。すなわち、上記(注)に示された強さ
等級2
基準法レベルの1.25倍の強さ
等級3
基準法レベルの1.5倍の強さ
(注)住宅性能表示制度における「地震の強さ」のグレード(等級)の意味。なお、この制度では「台風に対する強さ」のグレードも決められている。