技 高い技能に支えられた高品質な木の住まい

腕のいい大工技能者が関わり、質の高い工務店が現場を管理しても、木材の使い方に精通していない設計者が加わったのではいい家は望むべくもありません。「とくしまの家・120」という地域適合型木造住宅の実現には、大工技能、工事管理技能、そして設計技能が高いレベルにあることが第一条件。加えて、3者が適切に協働する(流行の言葉だと「コラボレーション」でしょうか)ことが不可欠となるでしょう。 つまり、設計者が的確に設計・監理を行い、大工技能者が持てる技をフルに駆使して木工事を進め、工事を工務店等が適切に管理していくという協働体制が重要なのです。

それぞれが高いレベルの技能・資質を確保・維持する方策を木住協は模索し、様々に実践してきました。

設計者の能力・資質は基本的には個人の努力で培われるものでしょう。しかし、そこに的確な情報提供の場が設けられれば効果的で大きく報われる−木住協はこう考え、著名な建築家らを招聘しての「木造建築スクール」や話題性の高い木造施設を主対象とした「見学会」などを数多く主催してきたのです。

大工技能そのものを具体的・直接的に向上させる方策は容易には見つかりません。そこで、木住協が採ったのは、間接的支援策とでも呼ぶべき方策。具体的には、できるだけ多くの若者に大工職に参入してもらうこととがんばってきたベテラン大工さんを顕彰することです。前者は「とくしま木匠塾」という大工技能者育成校に、また、後者は「あっぱれ棟梁コンクール」という表彰制度に結実し、大きな成果を上げました。

もちろん、こうした事業は、「徳島の大工事情」を始めとする多くの実態調査・研究を重ねた結果、その必要性や効果が大きいと判断され具体化されていったものでした。 なお、とくしま木匠塾という若手大工育成策は、現在フレッセ主催の「大工技能塾」と木住協が連携した事業に引き継がれています。

また、工務店等の管理・運営に関する質向上も木住協の発足以来の大きな課題でした。内容が不明朗と指摘されることの多かった木造住宅の見積書を改善する(具体的には価格と仕様の関係を明示しようとした「木造住宅仕様価格対照表」の刊行)ことから始め、共同・協業化の促進策に関する調査研究にも力を入れてきました。近年行った「建築市場」の調査研究や住宅性能表示制度の導入・普及活動も工務店等の管理・運営の質向上に役立つ事業といえるでしょう。

さらに、大工技能者、工事管理者、そして設計者−この3者が適切に協働した結果である、本県の木造建築物情報を収集し、とりまとめ、写真集として刊行し、3者の能力向上及び本県木造建築物のさらなる質向上等を図ることにも努めてきました。

特筆すべきは、こうした木造住宅の供給側が一堂に会するテーブルが木住協という組織の中で用意されたことでしょう。このテーブルには、設計者、大工技能者、そして工務店等に加え、木材林業サイド及び関係行政機関も一緒に着きました。 日常的にこのテーブル上で交わされた数多くの情報や意見が、木造住宅供給側に一体として活動していくことの重要性を認識させ、また、それぞれの分野の質向上にも役立ち、本県の在来軸組工法の木造住宅推進に大きく貢献したと言えるのではないでしょうか。

(注)本県の木住協のような団体は、昭和60年前後林産県を中心に全国各地で誕生しました。 「木造振興」は当時国が力を注いでいた行政課題でもあったからです。 しかしながら、本県木住協のように活動が活発に行われ、しかも、それが現在まで紆余曲 折を経ながらもほぼ同じような状態で続いている例は稀です。 木住協関係者としては誇りにしていいことだと思います。